【短編集】僕達の夏
ガラッ

「!」



気が付くと晃矢のいる玄関まで走っていた。
帰って来たばっかりの晃矢が罰が悪そうに僕を見上げる。


「ただいま…」
「…何処ほっつき歩いてたんだよ。」

待っててイライラしてたせいか声がつい険しくなってしまう。



「ごめん…こんなに遅くなるとは思わなかった…」


本当に申し訳なさそうにする晃矢を見て、気が付いた。

晃矢は知ってたんだ。独りで待つ事の寂しさを。
わかってるから、謝ってる。

僕が同じ立場だったら間違いなく『僕が何処に行ってたって晃矢には関係ない』って言ってる。
そう思うと、沸々とわいていた怒りが和らいで、何処かほっと安堵している自分に気が付いた。


ぐきゅゅぅぅぅぅ〜っ


気が付いたと同時、僕と晃矢の腹が鳴った。

「…腹、減った。」

急にめそってなった晃矢を見てたら、なんだかおかしくてちょっと吹き出した。

「飯、出来てるから、早く食べよう。」





晃矢がいつも僕の側にいようとする理由が、少しわかったかもしれない。
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