【短編集】僕達の夏
どうしてそんな事教えてくれるの?って晃矢君に聞いたら、彼は『自分でもよくわからない』と笑った後に言った。


『なんかカザリと紗耶香って似てるんだよな。…いやいや、顔じゃなくて、雰囲気が。』




そうしてるうちにふと何処かから聞こえた風鈴の音に、彼には珍しく遠くを見るように目を細めて、誰に言うでもなしに呟いた。

『泰斗にとってカザリの存在は大きかったはずなんだ。覚えてなくてもあんなに暗かったあいつの性格は確かに変わったんだから。』

その思いは今までずっと晃矢君一人の胸にしまわれてきたんだろう。

『本当に、覚えてねぇんだよな。』
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