【短編集】僕達の夏
想いのままに描いた何枚ものアイディアスケッチを横に、私はまたココアをすすりだした。

さっきより若干熱は失せたものの、やっぱりそれはじくりと私の芯を温めた。


「素晴らしいですね」
「へ?」

マスターは変わらず微笑っている。



「ご自身で"鍵"を見つけたようですね」

アイディアスケッチを眺めていたリリーがすかさず口を挟む。

「マスターはここに来る人間に"鍵"をそれとなく渡してるのよ」
「"鍵"?」


渡された覚えなんてないぞ?


「此処でお出ししている飲み物にはその"鍵"の力があるんですよ」
「いつもはマスターがその子に合った飲み物を出すんだけどあんたの場合はわからなかったんですって」


「わかんなかった?なんで?」
「知らないわよそんなの」


おいおーい。
自分から言っておいてなんてつっけんどんなんだこの子はー…


「たまにいるのよ。マスターでも"鍵"のわからない子って。そーゆー子は自分で自分の"鍵"を見つけるしかないの」
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