【短編集】僕達の夏
なるほど、すごいな私の野性の勘。

「そういった方はなかなか見つけるのにも時間がかかる方が多い。あなたはそういったものを見つける勘が優れているようだ」

リリーが横から私の顔を覗き込みニッコリ笑った。
やっぱ笑った方が可愛いな。この子。


「この店に気に入られるわね。あなた」

…うぇー?
この店意思があらっしゃるのー?
まぁ、いまさら驚かないけど。





悩みがとけてすっきりした気分でリリー達と話すのは、とても楽しくて、何故か懐かしい感じがした。

帰る前に、あの歌うドールの所に向かった。



その歌声は相変わらず綺麗で、やはり昨日見た時と同様痛ましいくらいに風化に身を任せている。


「大丈夫だよ。貴女の歌、すごく温かいもの。届くよ…きっと」


私は彼女にそっと話し掛けて、店を後にした。
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