『私も歩けばイケメンにあたる♪』
やがて、”面倒をみてあげなさい”の三男、範君が帰宅すると、
またもや
”初めまして~”
の挨拶を繰り返した。
もう私の挨拶を、ビデオにでも録画して流してほしいくらいだ。
範君は心さんを少し小さくした感じの男の子で・・・・
やっぱり
イケメン
だった。
身長は170くらいだと思うけど、くりくりした目が小動物を思わせる。
「範っす。ども。」
なんて、ちょっとはにかんだ笑顔がすごくかわいい。
世の中にはいるんだなー。
こういう恵まれた一家。
お金持ってて、イケメン。
なんかもう、それだけで特権階級だよね。
私みたいな人間もいるのにな・・・。
「範君も帰って来たことだし、夕飯にしない?お腹空いてきちゃった!!」
暗くなりかけた私に、母の明るい声が振ってきた。
こういうところは、本当、すくわれる。
あれ?でも確か兄弟は3人じゃなかった?
「清はね、今日は学校の友達とご飯食べに行くんだって。
まったく、中学生のくせに生意気だよな。俺のときなんて、親と一緒にお祝いだったってのにさ。」
私のココロの声に返事をするように、心さんが話しかけてきた。
「ひかりちゃんの卒業祝いは、皆でやろうな!」
ハイトーンな心さんの声に、今日はじめて、自然な笑顔になって、私はうなずいた。
心さんは不思議な人だ。
なんというか、人に警戒心を抱かせない感じ。
すごく自然で、言われた言葉を素直に受け止められるというか。
包容力があるのかな。
それとも、単に年上だから?
でも、こんな人がお兄さんになってくれるなら、悪くないかも・・。
私って意外に単純だ。