『私も歩けばイケメンにあたる♪』
「あ、疲れちゃった?あと30分くらいで着くからさ。
親父たちも、もうすぐ家に着くってメール来たから。」
ため息に答えるように、心がやさしく声をかけてくれた。
「い、いえ、卒業式で緊張してたから。
そういえば、さっき
『お父さんも卒業式で迎えが間に合わない』、って」
私の質問が終わらないうちに、母が口を挟んだ。
「次男の清(せい)君は、ひかりと同い年なのよ。
で、今日が卒業式だから、優一さんも出席してたのよ。
そうそう高校もひかりと同じだから仲良くね。」
母はさらっと、爆弾発言をかました。
母の天然キャラは承知しているが、本当に
”今日のおかずはコロッケよ~”
くらいののりで、かましてくれる。
まあ、だから私なんかを育てられたわけなんだろうけど・・
「あとね、三男の範(のり)君は、ひかりの一つ下よ。年下なんだから、面倒みてあげなさいよ。
そして長男の心くんは、この通り、頼れるイイ男!なんかあったら相談しなさいね。ね、よろしくね、心君!」
母は楽しそうに笑っている。
「もちろんですよ。幸子(さちこ)さん。」
心さんの口から出た『幸子さん』という女性の名前に一瞬
どきり
とする。
男性の口から母の名前を聞くなんて・・・・この10年なかったことだ。
「俺でよければ、いつでも頼ってな。ひかりちゃん!」
無言の私の反応をどう思ったのか、心さんはバックミラー越しに、私の目を覗き込んだ。
「は、はい。よろしく・・お願い・・し・ます」
声がうわずっているのは、心さんと目が合ってどきりとしたせい、
そう思った。
それにしては、心臓が嫌なはね方をしていたけど、私は気づかないふりをした。