スピリチュアル
それから、どうやら私の記憶は抜けてしまったみたい。
全然思い出せない。


気づいたら
いつもパパが怒鳴ってる。

仕事から帰るとすぐにお酒を飲んで。

ただ帰っただけなのに
「うるさい」だとか
「静かにしろ」だとか怒られる。

パパは家に帰ってくる事が少なくなった。

パパを見る事がなくなった。

少し帰らないという事だろうけど
テーブルの上に何万もお金が置いてあった。

たまに帰ると怒鳴られるから
恐くてお金が沢山置いてあると嬉しくなった。



パパは昔からお金で全て解決してきた。

小学生の頃、友達と喧嘩した。
家に誰も居なくて良かった。

悔しかったから学校では泣かなかった。
だから家でいっぱい泣いた。

泣いてたからパパが帰宅したのも気づかなかった。


「おい!」

ビックリした。

「な、なに?」
涙を見せたくなくてゴシゴシと服の袖で拭いた。

「ちょっと買い物に行こう」

「やだよ」
私は今悲しいの、買い物行きたくない。
泣いてる私を買い物に?なんで?

怒鳴り散らかされて
無理やり連れ出された

近所のおもちゃ屋さんに着いた

「好きなのを選べ」

今日誕生日でもないのに?何で?

モヤモヤした気持ちで
いらないと答えると

ムッとした顔をしたので
目の前にディスプレイされてた大きなクマのヌイグルミが欲しいと言った。

「うるさいから、それで泣きやめ」
と帰り道、パパが言った。



家に帰るとママが居て
「どうしたの??買ってもらったの?良かったわねぇ~」
とヌイグルミを受け取った。

ママは私を見て目が真っ赤で腫れぼったいのに気づいた。

「どうしたの?何かあったの?」

私はママに泣きついた。
「本当はこのヌイグルミじゃないのが良かった~」

本当の気持ちは違う。
泣いてる私を見てパパが
「どうした?何かあったのか?」
と言ってくれると思ってた事を
見事に玉砕してくれたのが悲しかった。
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