Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
『彼』は突然、ポイっと
コントローラーを置くと
腰にひいてたクッションを
横にずらして、体を横たえた
「やんないの?」
『…少し のぼせた』
「…つっ 冷たいものは?!」
『…いいよ』
「でも」
『…居ればいいじゃん』
――こっちに目を向けられて
そう言われる
体が固まって
「……うん」と
それだけ、やっと言った
距離は30cm位
どうしていいかわかんない
波の音と
耳の奥で、バクバク音がする
……まだ見てる
『彼女』の磁力は
なんだか普段は、
得体がしれないフワフワした感じ
『彼』のは、普段から凄く尖ってて
刺してくるみたいな空気
二人とも、それが時折
逆流するみたいに反転して
……優しくなる
――― こんな状況で
泣くなって方が無理で
やっぱり涙が、思い切り出て来た
『彼』は目を見開いて
その後すぐに、眉をしかめる
『…俺と居るの、嫌?』
そんな聞かれ方にびっくりして、
首を横に振った
『彼』は指を出して
すぐに引っ込めて
私の髪に触ろうとしたみたいだったけど
やめてしまう
『……心配したんだ 俺
青山さんのベースの時
おまえが動きそうに思った
―― おまえが怪我したり
…殴られたりする事考えたら
歌えなくなった
…こういう気持ち
初めてだったから、アズに聞いた
アズは勝手に体が動いたって言った
だから
…会いに行った
でもこれが、世の中で言う"好き"とか
恋なのかは、わからない…
強い気持ちが判断基準って言うなら
…今はまだ アズへの気持ちのが強い
もしかしなくても
俺達の基準は、かなり狂ってる
でも
おまえの事が心配だったのは本当だし
…おまえのベースを
探しに行った時の気持ちとは
少し違うと思う
―― これが今の俺の
おまえが好きって言ってくれた事への
正直なレス
俺自身も、今はまだお前が
歌う俺しか知らないから
……そういう思いもある』
「……うん 」