Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜
『彼』は、白いパラソルの下
少し離れた所に座って
皆を見ていた―――
それはまるで
何か、その灰色の目が
カメラみたい
全て写し取るみたいに
ただじっと、後ろ手を突いてる
一瞬強い風が吹いて
『彼』が前髪をかきあげた時
その空気が、緩んだ
「…食べないの?」
そう言いながら
『彼』の横に、移動して、しゃがんだ
『…焼きそば出来るまで、待ってる』
その言い方が子供みたいで
なんかおかしい
"皆を、見てたの?"
そう聞く事は、たやすくて
きっと『彼』も
『彼』っぽい、詩みたいな内容で
答えてくれるのは、判ってた
でもそれは
何だか宝石みたいなもので
私は触ったらいけない気がした
……前ならきっと
ズケズケ、聞いてたかもしれないけど
『彼』の手元に置いてあった携帯
着信があって
青いランプが光る
…誰かとメールしてたんだ…
『…岡田さん 』
「うお?!
が、外国行っちゃったの?!」
『…行ってない
きっと、東京に出て来る』
「…………ぅえええっ?!」
『…ずっと阿尾森から出た事無くて
知り合いが居ない場所に来るの
正直、怖かったらしいけど
"あの日、決めた"って
青山さんと、バトルした日に』
「…平気なのかな…」
『…何が 』
「…うまく言えないけど」
『…同じ空と海が見たいって
いつかアズに
言われた事があるらしくて
……それを岡田さんは
地元の海って、こだわって
それを映像にしたりしてた
……でもそれは、違うって
気が付いた って』
「――…何で気が付いたんだろう
ここの海に来たから?」
『…違う 』
「……違うの? 」
『………日比谷野外 』
「…来てたの?!」
『…アズがチケット送ってた
アズの公式の
初めてのライヴだから
…その時の観客の波と、空とビル
それだって
同じ、海と空だ
―― しばらくここで考えてた時
気が付いたんだって』