天使の涙(仮)
あのときの衝撃や胸の痛みがリアルで、何よりもあの美都子の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
もう、何を信じたらいいのかさえ私にはわからなかった。
「実々、こんなときに言うのはどうかと思うけど……。………赤ちゃん、流れたって…。もう、助からなっ……。」
私の横で深刻そうに話す諒二は言葉を言い切る前に悔しそうに泣いていた。
流れた?
そうなんだ…。
一気に押し寄せてきた波に、悲しいとか悔しいとかそんな感情さえ持てなかった。
泣いている諒二を見ても、俯いて黙っている美都子と瑶太を見ても何の感情もない。
ただ私は見慣れない天井の一点を見つめて、何も考えられなかった。
いや、何も考えたくなかったのかもしれない。
ただわかるのは、階段から落ちた私のお腹の中にはもう、諒二との赤ちゃんがいないのだと。
それだけは紛れもない事実だった。
だけど、見てしまったんだ。
未だ涙を流す諒二の肩越しに俯きながらにもニヤけた美都子の顔を…。