感方恋薬-かんぽうこいやく-
人間努力だ、根性だ。
そして、振り向いて眼に入って来たの
は、長い白髪を後ろで束ねて、白い長
い鬚を蓄え、眼の下の当たり迄伸びた
白くて長い眉毛。
その性で眼の動きが良く分らないんで
表情が良くわからない和服姿の老人だ
った。
「あ…あは…あはははは…」
乾いた笑いがキッチンに響く…
そして実態を認識したあたしは、頭の中
が真っ白になった。
一言で言えば「出た」という感じだろう
か。
この時点で気を失うだけの精神力が有れ
ば良かったんだけど、生憎、あたしの精
神力は、案外頼りに成る奴だったらしい。