感方恋薬-かんぽうこいやく-
あたしは慌ててガスの火を弱くしてシナモンスティックで掻きまわす。


「危ない処じゃったのう」


爺が鬚を弄びながらあたしに向って、にかっと笑った気がしたが、あたしはそれを感じて、むかっとした。


てめ~が現れなければこんな事に成らなかったんじゃい。


「今度は、なんの用?」


あたしは落ち着きを取り戻したふりをしつつもちょっと震える手先でシナモンスティックをつまみ鍋の中身をぐるぐる掻きまわす。


「あ~あ~、そんなに乱暴に掻き回しては効果が失せてしまうぞ」
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