感方恋薬-かんぽうこいやく-
この「四角」というのは勿論、あだ名である。


本名は斉藤というごく普通の名前なのだが、この斉藤先生、四角い顔の輪郭に四角いフレームの眼鏡、更にびっちりと七三に分けた髪型で絶壁頭なので人間の体の上に箱がのっかっている様に見える、この事から生徒達は彼の事を、自然に「四角」と呼ぶ様になった。


あたしは、その「四角」が机で仕事をしているのを見ると、これ以上は無いと言う程のとびっきりの作り笑顔で出来るだけ明るく近付き、とびっきり媚びた声で話し掛けた。


「あの、し…いえ斉藤先生、ちょっと宜しいですか?」


あたしは「四角」前に立つとわざと、たどたどしく尋ねた。
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