感方恋薬-かんぽうこいやく-
全く御苦労事と思うが、あたしみたいに損得勘定抜きで実験に勤しむ幸は、あたしなんかよりも純粋にできているのだろう。


その辺だけは評価してやろうとあたしは思った。


         ★


例によって則子はいそいそと部活に出かけて行った。


今日もあたしは一人で下校する事に相成った訳だが、教室を出る寸前に紀美代の躊躇いがちな声に呼び止められた。


「あ…あのう…」


頬を紅らめながら、あたしに話しかける彼女に思わずくらっと来そうに成ったのをぐっと堪えて(言っておくが、あたしにその手の趣味は無い…ハズだ)平静を装うと


「ん、なあに?」


「あのう…ちょっとお聞きしたいことが有るんですが」


「うん良いけど」
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