感方恋薬-かんぽうこいやく-
「成程…」


あたしは紀美代に視線を移した。


紀美代の席の横には少し大きめの巾着袋が鞄と一緒に掛けられて居る。


おそらく今日も幸の為にお昼を用意して来たのだろう。


紀美代、ごめんね、たった今、勝負が着いちゃったよ。


あたしは、紀美代が急に可哀そうに感じられて来た。


純粋に恋愛感情を抱いている彼女と、今迄空気の様にしか感じて居なかったあたし。


軍配はあたし…幸に、あたしが好きだと言った時点で勝負が決まる。
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