感方恋薬-かんぽうこいやく-
そして呪文を唱えようとした瞬間。


「だから、それがいかんのじゃよ」


肩越しに、聞いた事の有る爺の声が聞こえた。


あたしは、シナモンスティックを放り出しそうに成ったが、それをぐっと堪えた。


「ど…何処が…イケないのよ」


爺はあたしの横をするりとすり抜けて鍋の中を覗き込んだ。


「あ~やはりのう。これはいきなり全部の材料を煮込んではいかんのじゃよ。料理だって手順て物が有るじゃろ」


爺は鍋を持ち上げると流しの三角コーナーにどっと中身を捨ててしまった。
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