この胸いっぱいの愛を。



狼狽える祐兄の後ろに見える、二つの影。

一つは見慣れた将兄の影。

もう一つは………






「あれ、もしかして妹さん?」







聞き慣れないその声に、私はビクリと体を震わせた。

目が合うと、ニッコリと微笑まれる。

この人が…………




「よろしくね、桃香ちゃん」


この人が、将兄の彼女………。




「将、お前案外やるじゃん!」

予想外の展開に、手を叩いてハシャぐ祐兄。


「兄さん、からかわないでください」

そんな祐兄のハシャぎっぷりに、どこか照れているような将兄。


「フフ、将くんのお兄さんって、将くんと全然似てないんだね」

二人のやりとりを見て、おしとやかに笑う彼女さん。




自分の家をこんなに居心地が悪いと感じるのは、初めてだった。




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