この胸いっぱいの愛を。
「将兄、迷惑かけてごめんね。
こんな時に風邪なんて……」
彼女さんから目を逸らして、気まずそうにしている将兄に声を掛ける。
「部活のことは気にするな。
そんなことより、お前は自分の身体のことを心配しろ」
―――――――具合は、大丈夫なのか?
不安げな表情で聞いてくる将兄を見て、無意識に口元が緩んでいたらしい。
私の真横に立った将兄が、眉間にしわを寄せた。
「……俺は、何かおかしいことを言ったか?」
「ううん、なにも」
―――――――ホントはね。
ちょっと、嬉しかったんだ。
将兄が、私を心配してくれたこと。
久しぶりに、自然な会話ができたこと。
「彼女さん、綺麗な人だね」
お世辞なんかじゃなくて、本当にそう思った。
町で見かけたら誰もが振り返るような、これ以上ないくらいに整った顔立ち。
いかにも上品って感じの、立ち振る舞い。
将兄と並んでても、私といる時みたいに姉弟には見えない。
私なんて、妹にしか見られたことないのに。
そう思うと、無性に泣きたくなって。
ゴロンと寝返りをして、三人に背を向けた。
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