この胸いっぱいの愛を。



「体調良くなったら、桃香も降りて来いよ〜」




ひとしきり騒いだ後(騒いでたのは祐兄だけだけど)、三人は私を残して階段を降りていった。

ドアが閉まる直前に見えたのは、幸せそうに微笑む彼女さんの横顔。


なんでかわからないけど……


胸が、苦しい。

とてもじゃないけど、居間に行ってあの三人に加わる気分にはなれない。


そんな私の気持ちとは裏腹に、祐兄の楽しそうな笑い声が耳に入ってくる。

時折、彼女さんの声も聞こえる。


でも、いくら耳を澄ましても、将兄の声は聞こえてこない。




(………そういえば、)


心なしか、最近の将兄は元気がなかった気がする。

今週に入ってからは、特に。


それはただ単に“なんとなく”そう思うだけで、確信めいたものではないけど。


そんな些細な変化も、私にはわかっちゃうんだ。




………いつも、将兄を見てたから。




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