砂漠の王と拾われ花嫁
目が覚めた莉世がパニックに陥り、起き上がったときに引っ張ってしまったのが原因だ。
「ラシッドさま!」
ラシッドの姿を見ると、女官たちは片膝をついて頭を下げる。ラシッドは娘に近づく。
ふたりは寝台を挟む格好だ。
「ずいぶんおてんばな娘だな。名をなんと言う?」
突然入ってきたラシッドを見て、莉世は驚いた顔になった。
(この人は……砂漠の人と同じ? あのときは口元まで白い布で覆われていたから……)
莉世は目の前にいる青年のあまりの美しさに、息を呑む。今のラシッドはカフィーヤを頭に巻いておらず、美麗な顔立ちがはっきりわかる。
答えない莉世に、アーメッドが一歩前に出て大声を上げる。
「娘! 名前を聞いているんだ!」
その途端、莉世の肩がビクッと跳ねる。
「アーメッド、叫ぶな。怯えているのがわからないのか」
ラシッドは寝台に沿って、莉世に近づこうとする。
「い、いやっ! 来ないでっ!」
入ってきた青年に見とれてしまっていた莉世は我に返り、気が狂ったように頭を振る。
小説や映画の中のアラビアンナイトの世界に出てくる雰囲気や、衣装がそっくりな人たち。
部屋も今まで莉世が暮らしていた部屋とまったく違い、金やターコイズなどの美しい石が使われた豪華なインテリア。
(わたし、どうしちゃったの? なんでこんな所にいるのかわからない。映画撮影なんだと誰か言ってほしい。明らかに外国人の容姿なのに、どうして日本語が通じるの?)
「ここは、ここはどこなのっ?」
莉世は落ち着こうと、呼吸を整えようとする。病み上がりの身体は力が入らず、立っているのが精一杯だが、せめて気を強く持ちたかった。
(砂漠でこの人に拾われたのは覚えている。その後、衛兵らしき男が乱暴にわたしを牢屋に入れた)
記憶があるのはそこまでだった。目が覚めると、この豪華な部屋で寝ていたのだ。
しかも着ていたショートパンツとキャミソール姿ではなく、薄い生地のひらひらしたドレスを着ていた。
「ラシッドさま!」
ラシッドの姿を見ると、女官たちは片膝をついて頭を下げる。ラシッドは娘に近づく。
ふたりは寝台を挟む格好だ。
「ずいぶんおてんばな娘だな。名をなんと言う?」
突然入ってきたラシッドを見て、莉世は驚いた顔になった。
(この人は……砂漠の人と同じ? あのときは口元まで白い布で覆われていたから……)
莉世は目の前にいる青年のあまりの美しさに、息を呑む。今のラシッドはカフィーヤを頭に巻いておらず、美麗な顔立ちがはっきりわかる。
答えない莉世に、アーメッドが一歩前に出て大声を上げる。
「娘! 名前を聞いているんだ!」
その途端、莉世の肩がビクッと跳ねる。
「アーメッド、叫ぶな。怯えているのがわからないのか」
ラシッドは寝台に沿って、莉世に近づこうとする。
「い、いやっ! 来ないでっ!」
入ってきた青年に見とれてしまっていた莉世は我に返り、気が狂ったように頭を振る。
小説や映画の中のアラビアンナイトの世界に出てくる雰囲気や、衣装がそっくりな人たち。
部屋も今まで莉世が暮らしていた部屋とまったく違い、金やターコイズなどの美しい石が使われた豪華なインテリア。
(わたし、どうしちゃったの? なんでこんな所にいるのかわからない。映画撮影なんだと誰か言ってほしい。明らかに外国人の容姿なのに、どうして日本語が通じるの?)
「ここは、ここはどこなのっ?」
莉世は落ち着こうと、呼吸を整えようとする。病み上がりの身体は力が入らず、立っているのが精一杯だが、せめて気を強く持ちたかった。
(砂漠でこの人に拾われたのは覚えている。その後、衛兵らしき男が乱暴にわたしを牢屋に入れた)
記憶があるのはそこまでだった。目が覚めると、この豪華な部屋で寝ていたのだ。
しかも着ていたショートパンツとキャミソール姿ではなく、薄い生地のひらひらしたドレスを着ていた。