砂漠の王と拾われ花嫁
「ラシッドさまに向かって、なんという口のきき方を!」

アーメッドが再び莉世に叱咤する。

「よい、アーメッド」

ラシッドは、色素の薄い茶色の瞳と視線を合わせる。とても美しい瞳と髪に、ラシッドは興味を惹かれた。
莉世は日本人だが、生まれつき色素が薄かった。

(瞳の薄い茶色は、我が国で一番高価なインペリアルトパーズのようだ)

「ここはジャダハール国。砂漠に囲まれた国だ」

ラシッドは莉世のいる位置に少しずつ距離を詰める。

「ジャ、ジャダハール国?」

莉世はポカンと口を開けたままで、眉根を寄せる。

(聞いたことがない……どこにあるの? この国……中東? 服装はそれっぽい)

考えているうちに、莉世の目の前にラシッドが来ていた。

「お前の名前は? どこから来た?」

困惑していると、抱き上げられて身体が浮く。

「きゃっ! 離して!」
「おどおどするな。寝台に座らせるだけだ。立っているのもつらいだろう?」

ラシッドは小刻みに震える身体を、寝台の上へ下ろす。

「お前の名前は?」
「野山莉世。日本人です。日本へ帰らないと! お願いです。日本へ帰して!」

莉世は両親を思うと胸が締めつけられるように痛くなり、泣き出してしまった。

(帰りたい……お姉ちゃん、助けて)

うつむくと顔を両手で覆い声を押し殺して泣く莉世に、ラシッドはどうしたものかと考える。

(ニホンジンだと? ニホンとは、なんなんだ?)

この世界に日本という国はない。砂漠の王たるラシッドがいうのだから間違いはない。


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