砂漠の王と拾われ花嫁
「なぜ砂漠へ出た?」


「・・・・家に帰りたかったの」


「家?お前の家は宮殿だろう?」


「あそこはわたしの家じゃないわ わたしの家は日本にあるんだもん」


莉世は顔を上げてラシッドを見た。


英知を秘めた黒い瞳と目が合うと心の中まで見透かされそうだ。



再び莉世は視線を地面に落とした。


ラシッドは莉世の口からあそこは家じゃないと言われ胸が締め付けられる思いがした。



莉世を不安な気持ちにさせたのはわたしのせいだ。


左手が動かない莉世は心細かったのだろう。


忙しさにかまけて余り相手をしてやれなかった事を悔やむ。



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