音楽バカ

「この部の外部指導を任された河合 遙ハルカです。
 みなさん、よろしくお願いします。」

遙は軽く頭を下げた。
女子勢はわぁっと湧いているが、菅波と石橋をぬいた11人の男子勢は下倉を筆頭にテンションがた落ちである。

「何か訊きたいことがあれば」
「はい!」

遙が言い終わる前に被せたのは、「外部指導は男ですか?」と鼻息を荒くしていた2年生の女子の鈴木だ。

「遙さんは彼女いますか?」

「お前はまた余計なことを…」

菅波は思わず鈴木をにらんだ。鈴木は見えてませんという顔をして遙を見つめる。

「すいません…」

伺うように遙を見るが、特に気を悪くした様子はない。

「いえ、大丈夫ですよ。
 なんか中学生の頃を思い出します。」

と菅波に笑いかけた。

「彼女はいません。
 俺なんかにはできませんよ。」

「はい!有力候補になります!」

先ほどの女子が手を挙げた。これを見た周りの女子は競って手を挙げ始めた。

「はいはい!あたしも!」
「えー、ずるーい!
 じゃあ、あたしも!!」

女子と反比例して男子は完全に萎えている。さすがにまずいなと感じた菅波が止めに入った。

「わかった、わかったからやめろって。」

止められた女子は不満そうだが、遙は相変わらず笑っている。

「遙さん、吹奏楽の経験は?」

下の名前で呼ぶんだ?という下倉の微妙な心境をよそに、希良は純粋に思ったことを訊いた。

「中学・高校は吹奏楽部でした。
 パートはフルートです。」

「大学で専攻してるのもやっぱフルートですか?」

次に口を開いたのは石橋だ。

「いえ、指揮科です。」

「どれくらい周期で来られますか?」

菅波は心配そうに訊いた。

「週一で発表前は+αかな。」

今まで自分たちだけでやってきた希良たちにとって、週一でも大きな変化である。
< 10 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop