音楽バカ
職員室前に着くと希良は男に先を勧めた。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
男は微笑んで職員室に入っていった。
少し間を空けてから希良も職員室に入った。
―トントンっ
「失礼しまーすっ。
三井先生お願いしま…?」
三井はさっきの男と話している。かなり親しそうだ。
時々、気づいたように周りの先生が男に話しかける。
あれ、本当に誰なんだろう。
やっぱ卒業生なのかな。
でもそれだったら職員室の場所くらい知ってるはずだし。
なんかいろいろ考えるが、考えても仕方がないのでしばらく待っていると、三井がこちらに気がついた。
「あら、宮路さん、
ちょうど良かったわぁ。」
三井はその男を連れて廊下に出た。またもやその男の登場で下倉は完全にふてている。
「何がちょうどいいんですか?」
下倉が何か言う前に先手を打っておく。
「この人が外部指導の河合さん。」
「あぁ、そうだったんですか。」
何となく予想はしていたのでさほど驚かない。下倉は完全に顔がひきつっているが。
「よろしくお願いします。」
河合はやはり笑顔を崩さない。
「こちらこそ。」
希良も笑顔で返すが、下倉は黙っていた。下倉の中で河井への警戒レベルは相当高い。
「じゃあ、さっそく部室にご案内して。」
三井は部室の鍵を希良に渡して職員室に戻っていった。
「私、もっとムサい人が来ると思ってました。」
希良は河合の方を見上げた。
河合は笑って「ご期待に添えなくてすいません。」と言った。
下倉は相変わらずムスっとしている。
そんな下倉に河合は
「大丈夫、
君の彼女をとったりしませんから。」
と耳元でささやいた。
この時点で下倉の中で河合は完全に敵だと認識されたのであった。