音楽バカ
「…んなこと、知るか。」
ゆっくり顔を上げて、希良もはははっと乾いた笑いで返した。
「特に…田尾はあたしのパートだし。」
それを見ていた鈴木が口を開いた。
「…先輩、3人なら2年3組の教室居ますから。」
「えっ?」
「お願いします…。」
消え入りそうな声で頭を下げた。
それがどういう意味のお願いしますかは追求せずに、希良は2年3組の教室に向かった。
途中、初めて楽器にさわった時の後輩たちの様子や、初めて合奏した時の笑顔を思い出しながら。
ふつうに部活をやっていれば、こういう部員は出て当たり前でやめさせるべきなのかもしれないが、この部活では欠けてはいけない。
田尾。
あんた、勝手にやめたりしたらあたしが許さないから。
たどり着いた教室の中からバカみたいな笑い声が聞こえる。
希良は躊躇なく2年3組の教室のドアを開けた。