音楽バカ
「…。」
希良は表情を変えずに3枚の紙切れを差し出した。
「…これ」
黙っていた女子のうちの一人が口を開いた。
「退部届だ…。」
「…わかったらこれ書いて先生に提出して。」
それを渡して希良はさっさと教室を出た。
「美弥子、ペン貸して。」
田尾歩美アユミは黙って下を向いたままだった美弥子ミヤコに話しかけた。
「本当に書くの?!」
訊いたのはさっき退部届だとすぐに悟った紗英サエだ。
「んー、遙さんは残念だけど待ち伏せてアド訊くくらいできるんじゃない?」
美弥子と紗英は顔を見合わせた。
「はい、ペン。ボールペンでいいよね?」
「うん、ありがと。」
「…あゆ、」
「なにー?」
「ごめん、あたし部活やめたくない…。」
美弥子は消え入りそうな声で言った。
「は?」
「サックスが好きだし…。」
「何、今さら良い子ぶってんの?」
歩美は美弥子をにらみつけた。
「やめなよ、歩美。」
紗英は美弥子の前に立ちはだかった。
「何なの、紗英まで。」
「あたしもやめない。
トランペットが好きだから。」