音楽バカ
それっきり黙り込む山羽に、質問の意図が読めない希良は「あの……」と言った。
「ご用件は……?」
上目遣いに伺うと、山羽は意を決したように口を開いた。
「………河合くんは、」
河合くん…?
一瞬つながらなかった思考回路だが、遙のことだと気づいた。
「河合くんは元気……?」
ためらいがちに言った顔は、とても苦しそうだ。
「あ……はい。元気です。」
なんだかこちらが泣きたくなる。
「そう…。」
ほっとしてるのだろう。
表情こそ緩まないが、何となくわかった。
以前は知らないと言っていたが、やはりそれは嘘で。
美音とその兄のやりとりをぼんやりと思い出した。
「あなたもがんばるのよ、コンクール。」
「はい、ありがとうございます。」
そういって希良は笑った。
山羽の口角がほんの少しだけ上がったように見えた。
その優しげな表情が遙と重なった。
今年の夏はまだまだ暑くなりそうだ。
耳を塞ぎそうな蝉時雨も、ギラギラと照りつける日差しも、それを予感させる。