音楽バカ

扇風機は強で回してあるのに、教室はいっこうに涼しくならない。

通信簿を見て、「まぁこんなものだろう」と自己完結する。
後ろに座る美音を振り返った。
絶対に成績は良いので聞かない。聞いてやらない。

振り返ったのは自分のくせに話し始めたのは美音だった。

「夏休みだね。」

「うん……なんかあっという間。」

「そう?」

「あたしはねー…
 …いろいろと大変だったし。」

あの時でなかった美音の声は今なら余裕で通る。

「いい経験させてやったじゃん。」

「何で上から?!」

「上だもん、成績が。」

いつもと変わらないやり取りだが、最近では合唱うんぬんの話もするようになった。それだけで成長っちゃ成長だ。

「美音も今日から練習?」

「もちろん。」

「あたしもだよ。」

「あんた、コンクールっていつだっけ?」

「8月の……10日。
 そっちは?」

「あたしも同じ。」

「え…………まじか。」

希良は思わず目を見開いた。

「ま、お互いがんばろー。」

「うん。」
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