音楽バカ
ピーヒャラピー
ドンッドドンッ
ヒューーードンッドンッ
笛の音が聞こえる。
太鼓の音もする。
祭りの始めを告げる花火が響きわたる。
それだけで希良には十分夏が感じられる。
音は希良のすべてを満たすからだ。
ただ、願わくば……
「あ、わたあめがあたしを呼んでる!」
「あ、たこ焼きが俺を呼んでる!」
菅波は立て続けに2人の頭をはたいた。
「呼ぶか、このアホ夫婦が。」
「「ノット夫婦!!」」
最近、2人そろってのツッコミが様になってきている。
周りは大爆笑だが、それに付き合うこっちの身にもなってほしいと菅波は最近よく思う。
祭り会場のすぐ前の公民館の一室から、希良と下倉は縁日をのぞいていた。
小学生か、お前ら…。
菅波は思わずため息をついた。
それを見てか、全く無関係な顔をしていた奴がフォローにはいった。
「演奏が終わったら好きなだけ食えばいい。」
石橋は楽器を磨きながら言った。
「えー、まだ演奏まで時間あるじゃーん。」
「演奏前に食ったら、楽器に悪いだろ。」
「つーか本番前なのに余裕だな……。」
菅波は呆れたように言った。
「少し前なら本番前はあんなにガチガチに緊張してたのにな。」
石橋は言いながらも楽器を磨く手は止めない。
「克服したんだよーだ。」
希良は言いながらもわたあめから目を離さない。
わたあめと時計を交互に見ながら希良はこく一刻と迫る本番にいつもよりずっと胸を躍らせていた。