音楽バカ
本番が大丈夫になったのはやはりあの時からだった。
そう、あの本番。
響く歌声、
震える空気、
耳にこだまする和声、
緊張感、
達成感。
あれらが希良を変えた。
あれからたまに合唱部にも顔を出している。
歌いに行って嫌な顔をする部員は一人もいない。
歌うって気持ちいい。
吹奏楽とは違った楽しさがある。
合唱部に行っていることは菅波や石橋には言ってなかった。
言えずにいたと言う方が正しいか。
だがやはり今日の合唱部の演奏を楽しみにしている。
自分の本番と同じくらいにだ。
ぶっちゃけ、曲目等は知っている。
というか、多少歌える。
夏休みに入ってからはさすがに出ていなかったので完成形を知らないが。
「早く始まんないかなぁ。」
つぶやくと怪訝そうな顔をして石橋は言った。
「自分の本番がか?」