音楽バカ


ー「まったくよ〜」

それからずっと文句を言い続けているのは下倉である。

「なんで俺がお前と鍵を取りに行かなきゃいけないんだ?!」

このセリフも何回聞かされたのだろうか。
いい加減、希良も舌打ちがしたくなってきていたが、そこはこらえる。

「しょうがないでしょー?
 今日はついてないんだよ、きっと……」

「お前の運の悪さを俺にうつすんじゃねーよ。」

「な、なんでそうなる!!」

またいつものような言い合いが始まると思われたその時、

「あの、」

「はい?」「あ?」

希良と下倉が後ろを振り返ると大学生ほどの男が立っていた。
顔立ちは良く、髪は少し立てており、服装はカジュアル系である。

「お取り込み中、すみません。
 職員室はどこにありますか?」

[爽やか]という言葉がよく似合う。希良は平気な部類の人間と判断した。
が、
下倉は警戒心むき出しで男をみている。

「私たち、これから職員室行きますから、よければ案内します。」

「本当?
 それは助かります。」

希良は若干見とれている。
それを見て下倉はますますむっとした。

「あんた、何の用?
 ここの卒業生?」

「下倉っ」

「なんだよ。
 怪しい奴だったらどーすんだよ。」

男は苦笑して「大丈夫だよ、ほら。」と、来校証明書を見せた。
その後も下倉は不満そうだった。なだめる希良と言い返す下倉とのやりとりを終始笑顔で聞きながらその男は2人の後をついてきた。
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