*あたしの好きな人*
しばらくして、雄太が見えた。
「柚!」
「雄太‥‥ごめんね。」
「柚、さっきから謝ってばっかり。」
「あ、ごめん。あ‥‥また。」
「はは!まぁいいから行こう?」
「うん‥‥」
「どっか行ってた?」
「‥‥えっと、奈々とプール。」
「そっか‥‥」
なんとなく、会話が続かない。
雄太はどう思ってるんだろう。
何を考えているのかな。
少し歩くと、雄太が立ち止まった。
「俺んちここ。入って。」
雄太に案内されて、
雄太の部屋に入った。
初めて入る雄太の部屋。
その初めて来た場所で、
初めて来た雄太の部屋で、
あたしは雄太に別れを告げようとしている。
「柚?なんか元気ないけど。」
「え?‥‥ううん、そんなことない、よ?」
「そうか?‥‥はは、なんか俺、久しぶりに柚に会うから緊張してんじゃん。だせぇな。」
雄太、そんな顔でそんなこと言わないでよ。
言いだせないよ。
「柚。」
雄太はあたしの名前を呼び、
突然あたしを抱き寄せた。
やめて‥‥
そんなことしないで。
今さっき決めた心が、
また折れちゃいそうだよ。
「柚。好きだよ。柚‥‥」
雄太はそう言って
さらに強く抱き締めた。
「ゆ‥‥雄太‥‥ごめん、離して。」
「え?」
雄太は少し驚いたような顔であたしを見た。
「ちょ、えっ?柚!?なんで泣いてんだよ!?」
え?あたし泣いてる?
いつの間に涙なんて出てたんだろう。
これはなんの涙?