SEASON
特に感情を込めずに言い、陽生がこっちをチラッとみたけど気づかないふりをする。

このことは他人にとやかく言われる筋合いはない、とあたしが思ってるから。

「学校、家から遠いのか?」

「ううん」

学校が遠いのであれば寮に入ったりするだろうけどあたしの場合は別だ。

「じゃぁ、なんで?」

くるだろうとわかっていた質問にあたしは黙り込む。

どう答えていいのかわからなかったし、知り合って一週間かそこらの人に話すものでもない。

「言えない?」

陽生の言葉にコクン、と頷くと「そっか」と一言だけ言い、それ以上追求してこなかった。

陽生がそれだけで納得してくれてはいないだろうけど、聞いてこないことにホッ、とした。

本当の事を話せばあたしから遠ざかっていくのが目に見える。

わかってるから今はまだ言えない。

あれ以来車内はずっと静かでどちらも口を開かないままにあたしのアパートの前に着いた。

終始無言を貫き通したあたしはお礼を言い車を出て、そのままあたしの部屋を目指す。

送ってもらったんだから見送るべきなんだろうけど、今はそんな気になれない。
< 47 / 128 >

この作品をシェア

pagetop