SEASON
いつものように風幸はあたしの髪をクシャ、と撫でて笑顔を見せた。

風幸の笑顔を見たとたんすーっ、と波が引き落ち着くことができた。

人の笑顔って安心する――――風幸だからかな。

その後少し気まずいなぁって思ってたら2人ともいつも通りに声掛けてくれた。

4歳しか変わらないのに大人だな。

ううん、4歳もって言うべきなのかな。

風幸も陽生も思っていた以上に大人であたしの我が儘を聞いてくれる。

あの人も大人だけど、陽生たちのほうがよっぽど大人っぽい。

そこに幸せそうな顔をした千明が高倉さんを連れてやってきて、「遅せーよ」と陽生の一言を笑って流す。

ここに来てなにをするのかやっとわかった。

「ここで路上ライヴすんだよ」

言葉にするのを陽生に先に越されてしまったけど、あたしが思った通りだった。

駅前のちょっと拓けたところに楽器を続々と置いていくなかで、あたしはギターをずっと抱えていた。

ここにはあんなことする人なんていないのに――――わかってても他人に触られるのは嫌だ。
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