SEASON
このまま持ってたら楽器運ぶの手伝えないわけで。

ドラムとか楽器自体でかいし、アンプも運ばないといけないし。

けど、このままここに置くのは気が引けて――――

「大丈夫だ。誰も触ったりしない。早く準備するぞ」

いつの間にか風幸が隣に来ていて子供をなだめるように言われて、やっとギターを地面に置けた。

風幸には迷惑かけてばかりだな。

でも、風幸がいるとすごく落ち着く。

風幸だけじゃなくて、ここにいる3人もかな。

その後は順調に運び、準備が整った。

「んじゃ、やるか!」

陽生の一言で一曲目が始まった。

最初は足早に通り過ぎる人たちだったけど1人、また1人と足を止めて耳を傾けてくれる人がいた。

普通のサラリーマンだったり、制服着た学生だったり、金髪の大学生だったり、腰の曲がったおばあちゃんだったり、様々だった。

陽生の歌声が人を引き止めてる。

すごい、感動だった。

いつもは大きな箱の中で決まったお客さんに聞いていてもらってたけど、今は1からお客さんを引き止めてる
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