one.real
扉にかけたベルが開けた反動で控えめに鳴り、割と静かな店内でその高い音がカウンターの中の人物に来客を伝えてくれた。
『久しぶり、総兄』
1ヶ月ぶりに会う従兄弟に声をかける。
入って左奥にあるカウンターに目を向けると、壁際の二番目、見慣れた後ろ姿が俺に振り返った。
『ああ、そこ座れ』
正面に俺を捕えた総兄は一番壁ぎわの席を顎で示す。
紅茶の置かれたその席に腰掛けて、
『待たせてごめんな?
…潤、久しぶり』
キャップを緩くかぶり直した俺に潤は目を細めた。
用意されていたアールグレイを一口飲む。
俺好みに少しだけ冷ましてあるそれに総兄の優しさが感じられる。