one.real
俺の席の上、少し落とされた照明も、きっと若い女の客が多いこの店でバレないようにと気を遣ってくれたんだろう。
総兄は何も言っては来ないけど、気にしてくれてるのが分かる。
ここでは、俺が“俺”で居られるようにって。
『最近、仕事は?』
潤が俺に問いかける。
潤の喉をコーヒーが通り、その手が空いたカップをソーサーに戻したところで返事をする。
『一応モデルの仕事がメイン、でも最近は俳優も多いかな…お陰さまでここ何日かは本当寝てなかったし』
俳優…なんて言ってるのがちょっと恥ずかしい。
確かに俺は芸能人な訳で、特殊な世界にいる訳だけど…。
中身は何でもないただの少年、杉原碧杜で、それを知ってる潤や総兄の前で仕事の話をするのは未だに慣れない。