私の中の眠れるワタシ
「相田先生は、ありがとうって。
ワタシ、今でも好きと、正直に言えなくて、以前好きだったって話したんです。
今、これをとても、後悔してます……。
過去にではなくて、今好きって言ってたら、あんな事、聞かなくてよかったのに……。」
ここで、一気にしゃくり上げるように泣き出したワタシに、先生が慌てる。
「お、おいおい、どういうことだよ?
あんな事って?何聞いたんだ?」
そう、それ。その反応。
「相田先生、好きな人がいて、付き合っていたんです。ワタシが知ってる人と。」
担任は、過去に来た教育自習生や、若い先生を思い出しては、違うな……という風に首をひねりながら、もう一杯、コーヒーをカップへ足しに行った。
「相田先生、ワタシの事信頼してるから、相談したかったって言ってくれました。だから、嬉しかったけど。
美月と付き合っているなんて……。」
コーヒーカップを、その場に置いたまま、こちらへ身体を翻す。
「え?美月って。四組の高田の事か?嘘だろ?まさか!」
担任は、さっきよりも近い距離で、ワタシの方に身を乗り出して聞いている。
先生を、ツカマエタ……
ワタシは、告げ口するために言ったのではない。
あえて自分の堪えきれない辛さを、信頼できる担任に聞いてもらうため……。
これを、忘れなかった。