私の中の眠れるワタシ

俺達の間には、これから何かあるんだ。

彼はそう言った。

私は彼の勝手な妄想に、返す言葉もない。

……その誤解の方を解きたい。誰カ助ケテ。



なのに彼は、

「蜜は、俺の事、気が合わないって思ってる。ガキくさいなってさ。
でも、俺は初めて会った時思ったよ。」

そこまで話した時。
私は。この後に待つ鳥肌の予感がした。


「蜜があの日つけてたキャバレーは、蜜が本当は寂しがり屋な事も、恋がしたい事も俺にわかったよ。」

と。


私はドキドキしながらも混乱して、一体この人は何を言っているのだろうと、しばらく考え込んだ。

彼はその表情を見て、笑顔になり、

「あの日、蜜に何をつけてるの?って聞いたけど。知ってたんだ。ずっと前から。
あの香りは、グレのキャバレー。
昔の俺も使ってた。
蜜と俺は全く違うけど、だからこそ驚いたよ。
蜜は俺達がこれから付き合うわけはない。そう思っているかもしれないけど。
俺は付き合わないわけがないって思ってる。」

……可能性は、同じだよ。

とおどけたフリをして私にアッカンベをする彼。


−−信じられない。

あの時初めて会った私に、キャバレーの香りを手繰り寄せ、彼はすでに『ワタシ』を見つけていたなんて。




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