私の中の眠れるワタシ
ただ、それだけのために。
私は随分時間を割いていた。
でも、そうせざるを得なかったのだと思う。
−−−時々、「ワタシ」が現れたから。
それは、家にいる間が多かった。
また今日も、母はいない。
ご飯もない。
お金も置いてない。
どこにいるかは、知っているが、行く気はしない。
十一時になれば、閉店とともに帰ってくる。
今日は機嫌が良いだろうか、それとも……
地雷はどこにでも埋まっているのだ。
言葉には常に気をつけていたが、私の態度については、目の前にいつも鏡をつけておく事はできないから。
地雷を踏む事を防ぎようがなかった。
「また今日もやられた!
絶対に店側からチェックされてやがるんだ!
私がいっつも座っている台にさ、たまたまちょっと新しい人が座った途端、十連チャンよ。
あの店、馬鹿にしてるわ、まったく!!」
唾を飛ばしながら、勢いよく椅子に寝転がる母。
そこで、ふと私と目が合い起き上がると
「…あんたが変な時に電話なんかしてくるから、その間に台の波が変わったんだ。
そうだ、きっと!
どうしてくれるんだよ!
お前のせいだ!」
一気にまくし立てられ、髪を引っ張りながら、引きずられた。
……悪気はなかった。
弟の真也が、頭が痛くて、病院に行きたいと言うから、どうしたら良いか、パチンコ屋に電話しただけだった。
それも結局、
「今帰るところだから!」
と行って、切れたあと、今まで帰って来なかったのだけど。
母がぶら下げて帰ってきた、買い物袋の中には、
コーラと菓子パンが五つほど入っていた。
でも、もう確実に私の分はないだろう。
それに見合うだけの罪だ。
今日は、あの電話のタイミングが。
地雷を踏んだようだった。