私の中の眠れるワタシ
シンノと名乗った彼を、私は会社までの道のりで温かい感情とともに思い返した。
まだ、若い。
……二十五歳くらいか。
スーツを着ていたけど、保育士だったとおり、ジャージが似合いそうな、快活で陽気な感じだった。
吊り革に顔をぶつけていたな。
細身ではあったけど、子供を持ち上げる事くらい容易だろうと思われる筋肉をワイシャツの中に想像して、一人で赤くなった。
会社に戻り、一日の報告を終え、自分の仕事を片付けたら、十時をまわっていた。
今日も一人、誰も待つ事のないあの部屋に帰る。
だけど昨日までの孤独や侘しさが、薄らいでいる気がした。
『夢』を持つ事。
そんな簡単な事が難しくなってしまっていた自分。
抜け殻のように心を無くし働いていた自分に、再び魂が帰ってくるような気がした。