私の中の眠れるワタシ
電車にのると、運よく椅子に座れて私は心地よい揺れに、ウトウトしかけた。
−−竹林に座り込み、ワタシは一人。
誰の迎えもなかった。
薄暗い林の中で、湿った空気と、毛穴にまで染み込みそうな森の香りにむせる。
なんだか怖くなり、『レイ』と呼ぶワタシの声が、こだまして、こだまして……
やっぱり、一人だった。
「……がさきさん、ながさきさん?」
聞き覚えのある声にふと我にかえった。
「あ、起こしちゃいましたね。すいません。長崎さん、これからまた会社ですか?」
頭を上げると、シンノさんが立っていた。
私はこれもまた夢かというような気持ちで、彼を見つめた。
「……行カナクテモ、イインデス」
自分で何を突然言い出したのかと、自分に驚いた。
「そうなんですか?ハハハ、じゃ、飲みに行きませんか。僕も、なんだか今日は大勢で飲みたい気持ちになれなくて、帰って誰か、友達でも誘って飲もうと思ってたんです。」
私はこの奇跡に、運命を感じた。
いや、何もおこらないかもしれないけど、運命を変えてやるというくらいの、パワーが湧いてくる。
私は彼と、初めて同じ駅でおりた。