私の中の眠れるワタシ

「それじゃあ、シンノさんはあと、六年あるのね。」

「正確には、五年です。もうすぐ、二十五ですから。」

「私は三十まであと、三年。なんかうらやましいわ。」

彼は、えー?と驚いてみせて、

「僕と、同じくらいかと思ってました。長崎さん、キレイだから……」

と、残りのビールを一気に飲み干して、はにかんだ。


お世辞なのはわかるけど、素直に喜びたかった。

お世辞でも。
年齢より下に見られる事はなかったし、若い時から『大人っぽい』という言葉を使って、褒められる事が多かったから。


「うれしいな……」

心の中だけで呟いたつもりが、口からこぼれていた。

「今度から蜜さんって、呼んでもいいですか。」

「蜜でも、いいし。今からでも、いい。」

その言葉に怯えるかと思ったけど、彼はあっさり、

「じゃ、蜜。携帯の番号、僕に教えて?」

と、自分の携帯を鞄のポケットから取り出した。



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