私の中の眠れるワタシ

生活がやっと落ち着いて、私は彼のためにかいがいしく世話を焼きはじめた。

朝は、コーヒーを入れて、ワイシャツにアイロンをかけて……

夜は、お風呂で背中を流してあげて、またいつかのように、マッサージをしてあげて……

やってもやらなくてもいいようなコトばかり。

だけどハヤオはそんな小さな事にも、いちいち感謝してくれた。

こんな事、アキの時はもうなかった。


……あったんだろうけど、忘れた。


彼は、一緒に新しい夢もみてくれた。
なんでもいいから、夢がほしかった。
あの日アキが、何もない私にふと口にした、

『家族皆で来れる、癒しの家』

そんなものが、欲しかった。
もう、店じゃなくてもいいから。
そういう空間になるこの、部屋に。

私は、ここがそうなれば、と思う。


圭太郎を手放した事で、孫をかわいがりしょっちゅう家に来ていた母とは、もう連絡をとりにくくなってしまったけど。

むしろ、電話に、出てモラエナイ。

でも。
いつか、きっと。


少しずつ私達は、受け入れられるはず。誰からも。幸せになればいいだけ。
簡単だ。

そして、皆ここへ遊びに来て言うだろう。

思いきってみて、よかったね!と。


……そう思いたかった。




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