俺のココ、あいてるけど。
 
あたしは動かず、机に突っ伏した姿勢のまま。

今は誰に見られてもいいや、休憩中なんだし、と思って、入ったきた人には見向きもしなかった。


気配で、その人が自販機で飲み物を買うらしいことが分かった。

けれど・・・・チャリン。

買う前にお金を落としてしまったみたいで、テレビの音が小さく流れる室内に金属の音が響いた。


大丈夫かな?

顔を自販機のほうへ向けてみる。


とたん───・・。


ガタンッ!!


あたしはほとんど無意識に勢いよく立ち上がっていた。

立った衝撃で椅子が倒れて、飲みかけだったコーヒーがテーブルの上に盛大に散らばる。

だって、そこにいたのは・・・・。


「ごめんな、長澤・・・・」


モッサ君に振られた原因の人で、綾ちゃんとの仲もギクシャクすることになった原因でもある人。

・・・・登坂さんだった。


こんなときに会うなんて。

どうしよう・・・・。

すぐに走って出ていきたいけど、体が言うことを聞いてくれない。

嫌だ、会いたくなんてなかった。
 

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