不思議な家のアリス
彼は眉をひそめて、ミルクの入れすぎでコーヒーと呼べないぐらい白っぽくなったそれを飲んでいる。
「…何が?」
「何って…、その、さっきの…キ、キキキキキキスの事よ!」
何だかこっ恥ずかしくてどもりながら言うと、黒木くんは何て事無さ気に「あぁ。」と頷いた。
「……ワリ。夢見てた。」
「夢…?」
「…タラコの夢。」
…………。
「…そ、それは何?私がタラコ唇だって言いたいの?」
ちょっとムカつきながら聞くと、「…学校行く準備出来たら教えて。」と黒木くんはそっぽを向いた。
答えない所を見ると、図星らしい。何て…何て失礼な奴だ!
別に私の唇は取り立てて美しくはないけどさ、タラコと言われる程腫れぼったくは無いし!
イライラしながら居間を出て、歯を磨いて髪を整えた。
「じゃあ、行ってきますから!」
怒りが尾をひいて、刺々しく言い放つ。
「…それで行くのか?」
目をまるーく開いて、そんな私を見つめる黒木くん。
それで…って何?
制服に着替えたし、顔も洗ったし。歯も磨いて髪も整えた。
「?行くけど?」
「……ふーん。」
私の顔をもう一度だけ見て、「珍しーな」と言って黒木くんは玄関へと歩き出した