不思議な家のアリス


声を張り上げなくても良いように、黒木くんに近づいてからもう一度「何で?」と聞いた。



バイク何か乗った事無いし、乗りたいと思った事も無い。



大体これ何キロ出るの?


私は猛スピードで走る乗り物…遊園地で言う、絶叫マシン何かが物凄く苦手だ。


中学生で初めて出来た彼氏と行った遊園地で無理矢理乗せられて、恐怖のあまり足が動かなくなってゲロゲロ吐いたりしたこともある。



「…圭吾に案内しろって言われた。」



自信満々に家を出たのは良いけど、そう言えば昨日来たばっかりのこの家からどうやって学校に行けば良いのか分からなかった。



でも…バイク何か絶対に乗りたくない!



「…歩いて行ってくれない?」



図々しいお願いだけど、

彼の顔がいかにも面倒くさそうに歪んだけど、


ここは譲れない。




「やだ。」

「お願い。」

「無理。」

「お願いします。」

「じゃあ車で…」

「それは駄目!」

「なら乗れよ。」




押し問答に負けそうになった時、咄嗟に分担表の事を思い出した。




「あたし、今日王様!」



チッ、と舌を打って滅茶苦茶嫌そうに顔をしかめる黒木くん。


暫く間があったけど、結局バイクのエンジンを切って降りてくれた。





ほっ…。
良かった。





…実は、王様と言うのは咄嗟の嘘。

確か本当の王様は秋夜だった気がする。


どうしてもバイクに乗りたくなくて言ってみた最後の悪あがき。



…それにしても何て便利な制度なんだ!

王様・奴隷制度万歳!!


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