不思議な家のアリス
駐車場にバイクを戻し、黒木くんが戻ってきた。
「ありがとね。」
返事は無い。
………………。
かったるそうに歩く彼の後を続いて歩く事10分弱。
未だ会話は0。
「…あのー、あとどれ位歩くの?」
「30分位。」
遠!υ
歩けない距離じゃ無いけど、こりゃ毎朝通うのは大変だ。
自転車買おう。
………………。
「黒木くんは、無口なんだね。」
再びの沈黙に耐えきれず、ちょっと失礼な事を言ってみる。
「…クロで良い。」
「え?」
「黒木くんなんて呼ばれるの、何か変。」
「あ、分かった!」
確かに同じ家に住んでるのに"黒木くん"なんて、他人行儀で変だよね。
最初に怒られたから、何となく呼び方に対して気を使っちゃってたけど、少しは心を開いてくれてるのかな?
へへ、何か嬉しいや。
ニヤニヤしながらうつ向いて歩いていたら、いつの間にかクロは前方の遥か彼方に行ってしまっていて、急いで走った…ら。
それに気が付いたクロが、立ち止まって私を待っていてくれてる。
普通なら、当たり前の事なんだけど。
何でかちょっと嬉しくなった。
無口だしリアクションも薄いから、私が居候するの、クロは嫌なのかも…何て思ってたから。
嫌われてるわけじゃ無さそうで良かった。