不思議な家のアリス


少し走って、やっと追い付いた。



「ありがと。」

「ん。」

「最初はちょっと怖かったけど、優しいね。」




素直に気持ちを言ってみた。

返事は無いけど、少し赤く染まったクロの横顔。



ちょっとだけ、この人の事が分かった気がする。



実は甘党で、無口だけど照れ屋?




「好きな食べ物は何?」

「大福。苺入ってるやつ。」



ほら、やっぱり甘党。

"苺入ってるやつ"何て、可愛いの。




「嫌いなのは?」

「ピーマン。」



ぷっ。
小っちゃい子みたい。




「じゃあ趣味は?」

「昼寝。」




昼寝って趣味の枠に入るの?υ

まぁ、クロらしいか。






"質問ばっかだな。ちょっと黙れ"

とクロが呆れるまで、何個も何個も質問をぶつけて、学校までの道を歩いた。





"この人の事を知りたい"




そう、思ったから。






沈黙が苦では無くなり、暫く歩くと学校が見えてきた。


「あ、ここで大丈夫。ありがとね。」

「ん。」

「歩かせてゴメンね。クロの学校、ここから近い?」

「帰って寝る。」

「何で?ちゃんと学校行きなよυ」

「平気。じゃあな。」



何が平気なのか分かんないけど、クロはそう言って来た道を戻って行った。



「ありがとねー!」



少し小さくなったクロの背中に向かってもう一度叫ぶ。


返事は無いけど、きっと聞こえたはず。


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