不思議な家のアリス


してたんだけど。

立ち尽くす秋夜が邪魔で、階段を上りきれない。





「俺をシカトするたぁ、いい度胸してんなぁ?M子。そうか、そんなにいじめられたいのか。」

「ねぇ、邪魔。」





私が言うと、秋夜の目がギョッと見開かれた。




「何だと!?言っておくがな、俺は今日王様…」

「ごめんどいて、疲れてんの。」



秋夜が言い終わらないうちに言葉を被せると、益々その目が見開かれた。







「どーしたんだお前?何かあったか?それとも反抗期か?」

「何も無いよ。」

「嘘つけよ。"何かありました"って顔に書いてあんぞ。言えよ、スッキリするから。」


急に真面目な顔つきになる秋夜。






…何で秋夜は、こんなに人の変化を見つけるのが上手いんだろう。

バカなのに、こないだ知り合ったばっかりなのに。




何で秋夜は、こんなに上手に泣かせてくれるんだろう。

バカなのに。本当にバカなのに。





堪えていた物全てが涙になって溢れ出す。






わんわん泣き叫ぶ私を、秋夜はいつかの様に優しく抱き上げて、部屋まで運んでくれた。


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